1.笑顔の力
笑顔を大切にしましょう
「すみません。朝礼の朝の挨拶」のリーダーをお願いします」。
ある朝、R社に勤めるFさんは朝礼の進行係の女性に声をかけられ、「えっ、ちょっとまずい・・・」と焦りました。
R社では朝の挨拶のリーダーが、『職場の教養』の感謝を述べることになっていたので、「急に言われても、うまく感想が言えない」と思ったのです。
ところが、「悪いけれど、他のひとに頼んで」と断りかけたとき、Fさんの目に彼女のこぼれるような満面の笑みが飛び込んできました。
その目映い笑顔に魅せられて、次の瞬間、彼は思わず「はい、喜んで」と返事をしていたそうです。
「滅多に見ることができないような、素敵な笑顔だったんです。あの顔を見たら、とても断れませんでした。『笑顔が大切』とよく聞きますが、あのときほど笑顔の力を感じたことはありません」と、Fさんは照れ笑いしながら言います。
私たちも、人の心を揺り動かす「素敵な笑顔」を身につけたいものです。
2.「知る」ということ
本物の知力を高めましょう
「『知る』ということは自分が変わることだ。自分に都合の良い知識を集めて納得することではない」と語るのは、解剖学博士であり文筆家でもある養老孟司氏です。彼は折に触れて学生たちにこんな話をするそうです。
「君らが不治の病気になって、自分の命が半年もたないことを納得したとき、あの桜がどう見えるか?その瞬間からあの桜が違って見えるはずだ。なぜなら『来年はもうあの桜を見ることはできない』という思いで見るからだ。
去年までの自分は何を見ていたんだろうという気持ちになるはずだよ。これが自分が変わるということであり、本当に知るということです」。
人は病気をしてはじめて健康のありがたさを知るものですが、病気が治った後に、健康を維持するためにきちんと生活を変えられてこそ、健康のありがたさを知ったことになるのです。
心の奥底から「ありがとう」という感謝が湧き出るとき人は変わります。私たちも家族や周囲への感謝を深め、本当の『知』を深めていきたいものです。
3.本当の大人に
人と社会に貢献しましょう
今日は成人の日、職場の教養という雑誌をお読みの皆さんの中にも晴れて20歳を迎えた人がいることでしょう。
「成人の日」は昭和24年に国民の祝日として制定され、毎年1月15日と決められていましたが、平成12年より毎年1月の第2月曜日に改定されました。
未成年から成人へ、一番変わるのは何でしょうか。それは支えられる側から支える側へと立場が変わることです。親を支え、企業、社会を支えながら自らの人生に責任を持って歩いていけるか否かが大人と子供の別れ目です。
喫煙が許されたからといって、吸い殻をポイ捨てしたり、お酒が飲めるからといって泥酔して周囲に迷惑をかけているようでは大人はいえないでしょう。
自分の人生、そして仕事を通してどれだけ人や社会に貢献できるかが、新成人のみならずすべての大人に課せられたテーマです。
共に人生を謳歌しつつ、「貢献」の二文字を心に刻みながら新しい時代を拓いてゆきましょう。
4.率先垂範
自ら進んで行動しましょう
「子供は親の後ろ姿を見て育つ」とよく言われます。親の言うとおりにはなかなかなりませんが、やがては親のした通りのことを実行します。
同じように企業においても、経営者、上司、先輩の仕事ぶりを見て部下は育ちます。「やがてみせ、言ってきかせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」とは、かつての海軍大将山本56の言葉です。
自ら進んで行ない、きちんとその仕事のノウハウを説明し、実際にやらせてみる。そして結果をきちんと認め、うまくできたときにはすかさず誉める。誉め惜しみをしないリーダーのもとで、部下は「この人のためならば」と懸命に働き、成長してゆくのです。
人は言葉で動くのではありません。言葉を発する人間の誠意と実践に動かされるのです。
先輩一人ひとりが気付いたことを率先垂範して実行し、部下や後輩が自然に成長できる職場を創りあげたいものです。
5.昼下がりの出来事
先入観を捨てましょう
ある日の昼下がりのことです。バスに乗ったMさんの目に、一番後ろに座っている青年の姿が映りました。
伸ばしたままの足を座席に乗せ、ふんぞり返っています。そのうち車内がだんだん込み合うようになり、立つ人も出てきました。どの乗客も内心ではその青年を苦苦しく思っている様子で、気まずい雰囲気が漂いました。
けれども青年は意に介する様子もなく、車内を見回したり、外の風景を見ています。いよいよ青年がボタンを押してバスを降りるときがきました。
すると青年は背もたれの後ろからおもむろに松葉杖を取り出したのです。車内の雰囲気がさっと変わったのが、Mさんにもよく分かりました。
青年は曲らない足を引きずりながらバスを降りていきました。「その後ろ姿を見ながら先入観で人を見ていた自分が恥ずかしくて仕方がなかった」と氏は語ります。氏に限らず私たちは服装や外見だけで人を判断しがちです。
日頃から先入観のない素直な心で人と接していきましょう。
6.キャンセルOK
顧客の喜びを追求しましょう
埼玉県比企郡で弁当販売の仕事をしているS社のモットーは「キャンセルいつでもOK」です。
春、秋の行楽や運動会など野外行事のシーズンには、1日2千食以上の注文を受ける同社ですが、弁当を注文する主催者としては、当日のお天気が気になるところでしょう。曇っていて雨が降りそうなときなど、注文もついつい渋りがちになってしまいます。
「キャンセルいつでもOK」なら、主催者も安心してお弁当の予約ができるでしょう。このキャンセルOKの背景には、経営者でもあるSさん以下社員の「お客様のどんな要望も喜んで受ける」という姿勢があります。
同社は数年以上このシステムを続けていますが、実際にキャンセルがあったのは一件だけで、地元の人に愛されながら順調な経営を続けています。
顧客の要望と喜びを真剣に考え、応えようとするとき、その企業にとって最良の方法が浮びます。同社はその好例といえるでしょう。
7.いい関係
先手で声をかけましょう
「シカト」という言葉は、花札の紅葉の札に出ている鹿が後ろを向かいていることから「相手を無視したり知らん顔をする意味」として使われています。
職場においても、交友関係でも、人は誰かを呼んだとき、無視されると機嫌が悪くなるものです。上司と部下の関係ではなおさらです。承知で無視することはないにしても、呼ぶときの声が小さかったり、相手が仕事に追われているときなど、得てしてこういう小さなトラブルが起こりがちです。
明るくはっきりとした声で挨拶することは、こうした小さなトラブル防止にもつながります。朝一番の「おはよう」に始まり、「ご苦労様」と声を掛け合うことで、心がつながり無用のトラブルが減少します。
「最近の若い者は挨拶でもできない」と嘆く年輩者に限って、自分からの先手の挨拶が苦手なもの。シカトされたと思ったら、怒るのではなくいつも以上に明るく声をかけることです。
挨拶や声かけは、気付いた方から先手で行いましょう。
8.酷な言葉
前向きに聞きましょう
福島県在住の主婦Bさん(67歳)には、友人からかけられた忘れられないひと言があります。
10年ほど前、彼女が膠原病による発熱と痛みで、コーヒーカップすら持てない状態でいたときのこと、友人から「体はそんなでも声は出るでしょ」と言われ、コーラスサークルに入ることを半ば強引に勧められたのです。
「言われたときは、すごく酷な言葉に聞こえ、身のすくむ思いがした」と語る彼女ですが、思い切って大きな声で歌うことで気持ちが明るくなり、今ではコーラスだけではなく、視覚障害者のための朗読ボランティアをも行っています。
現在も両手首にギブスをしているBさんですが、「こんな私が草一本むしれる幸せ、庖丁を持てる幸せに浸っている毎日」と語ります。
厳しく思える言葉でも、前向きな心で受け止めれば飛躍のきっかけとなります。自分に注がれる言葉は、すべて天下からのメッセージと受け止め、幸せへのステップとしていきましょう。
9.勧め癖
お酒の節度を守りましょう
「酒の飲めないやつは信用できないと言われ異動の原因になった」「イッキ飲みを断ったらイジメにあった」等々、「イッキ飲み防止連絡協議会」がお酒の上での嫌がらせ体験を募集したところ、128件もの体験が寄せられました。
被害を受けた人の四割は20代男性で、相手は同じ職場の上司や先輩が四割を占めていました。ある企業では、業界関係者との合同歓迎会で、サラダボールに注いだ酒を新入社員に回し飲みさせる習慣があり、無理に飲まされて、急性アルコール中毒で入院した30代男性もいるくらいです。
上司・先輩と一緒に飲む楽しいお酒は、よきストレス解消であり、格好のコミュニケーションの場となりますが、お酒の強い人には、飲めない人の気持ちが分かりにくいのも事実です。
これらの行為を同協議会では「アルコールハラスメント」と呼んでいますが、知らず知らずのうちに私たちも同じことをしてはいないでしょうか。
お互いが節度を守り、お酒の時間を楽しく過ごしましょう。
10.即行後始末
気付いたらすぐ片付けましょう
出張の多いMさんが、半月ぶりに本社に戻ってきたときのことです。
その日たまたま早く出社した自分のデスクを見てびっくり、出張中に届いた書類が山と積まれています。彼は意を決してデスクの整理に取りかかりました。
まず机の上の書類のすべてに目を通し、必要のないものは処分し、早急に処理しなければならないものは、すぐに片づけました。そして約一時間かけて机の上を整理した彼は、ついでに引き出しの中の整理もはじめたのです。
乱雑になっていた引き出しの中をきちんと整理していると、ないと思って探していた道具や種類が出てくるなど、思いがけない収穫を得たMさん。その日一日を爽快に過ごし、仕事の能率が上がったのは言うまでもありません。
後始末を先送りすると、次の仕事にもマイナスの影響を及ぼします。「明日でもいい」と思わずに、気付いたときにサッと片づけるのが整理や後始末のポイントです。
常に身辺を美しくして、淀みのない仕事をしていきましょう。
11.一石二鳥
良いことは徹底して実行しましょう
ある地方都市に本社を持つ、Wタクシーでは、リピート客の増加を目的に「触れ合いポイントカード」のサービスを実施しました。
これは運賃500円ごとに1ポイントのスタンプを押し、20ポイントたまると景品を出すというもので、乗務員のAさんによれば「サービス自体がお客様に好評なだけではなく、自分たち上行員にとってもお客様に対する向上という会社の目標を徹底できる効果があった」そうです。
またサービスが始まったことが同業他社にもよい刺激になり、車内でおしぼりを出したり、乗るたびに景品を出すなど、市内全体のタクシーのサービスが向上し、マナーが良くなるなど各社の乗務員の資質も高められたそうです。
Wタクシーの成功は、単なる利益追求のためだけにとどまらず「お客様に喜んでいただき、また利用してもらおう」という顧客の満足追求に端を発したものであり、Aさんをはじめとする従業員が、それを理解し徹底したことにあります。
企業が明確な方針を打ち出し、社員が徹底して実行する所に繁栄はあるのです。
12.練習は裏切らない
真摯に鍛錬しましょう
シドニー五輪ソフトボールで、見事に銀メダルを獲得した日本チームを率いたのが、宇津木妙子監督(47歳)です。
猛練習と面倒見の良さで、チームをまとめ上げた宇津木監督ですが、インタビューに答えてこんなことを語っていました。
「私は大会前からメダルを取りますと宣言してきました。周囲からは『万が一ダメだったら困るよ』なんて言われましたが、確信があったんです。合宿した日は百日を越えましたし、何しろハードな練習をしてきました。
選手たちも人生の中で一番しんどかったんじゃないでしょうか。私自身も何度も死ぬんじゃないかと思いました。『練習は裏切らない』が私の信念ですから」「死ぬ気になる」と言葉で言うのは簡単ですが、それをやり遂げるのは並大抵のことではありません。けれども勝ちたかったら、うまくなりたかったら結局は練習するしかないのです。
どの世界においても、練習や努力がその人を裏切ることはないのです。
13.人柄を示す
挨拶に磨きをかけましょう
「挨拶が示す人柄 躊躇せず 先手で明るくはっきりと」。これは日常生活の七つの基本動作を示した「セブン・アクト」の第一節です。
挨拶を行う際、大切なのは(1)先手で(自分から先に) (2)心を込めて(動作・言葉。心情が一つに) (3)美しく(無駄な動きがない)の三つです。
この三つを通して、あなたの「人柄」が相手へと伝わるのです。例えば上長への挨拶と部下への挨拶が極端に違ったり、お客様によって挨拶の仕方が変わることは、状況によってそれぞれが必要な場合があるにせよ、好ましいことにいえないでしょう。
しかしどんな状況においても、挨拶という動作には、その人の心情が反映されるという事実に変わりはありません。言葉を変えればその人が「何を一番大切にしているか」という思想や哲学が反映されるのです。
権力や利権、損得を越えた「まごころ」が求められている今だからこそ、一人ひとりが優ぐしさと誠意にあふれた挨拶を交していきたいものです。
14.ネーミング
物を大切に扱います
「アキナ」「オリーブ」「マルちゃん」等々、これらは建築仮設機材を製造するF社工場内の工作機械やロボットにつけられた名前です。
社員がそれぞれ自分の担当する機械に、ネーミングをしたそうですが、「これによって社員の機会に対する意識がずいぶん変わってきた」とD社長は言います。
倫理研究所の創設者である丸山敏雄は「物は生きている。大切に使えば、その持ち主のために喜んで働く」と述べています。機械に名前をつけることは、それだけ機械に愛着を持って親しんでいるということですから、その結果、故障も少なくなり能率アップにつながるのも、うなずける話です。
車、パソコン、電話からボールペン一本に至るまで、どんな仕事であっても、物や道具なしには成り立ちません。しかし身近すぎるあまり、感謝して大切に使うことを忘れてはいないでしょうか。
F社のようにネーミングして親しむのも一つの方法です。みんなが工夫して物や機械と親しみ、大切にしていきましょう。
15.母の美点
親を喜ばせましょう
書道を学んでいるY子さんは、ある日の書道会でこんな課題を与えられました。「お母さんの美点 一、明るくやさしい 二、料理が上手 三、人のために進んで働く 四、いつも笑顔をたやさない お母さんありがとう」。書道会の仲間と一緒に、Y子さんはお手本を見ながら一生懸命練習しました。
最初はただ懸命に筆を選んでいた彼女ですが、ふと手を休めたとき、遠い故郷にいる母の顔が浮びました。「そうだ、この課題を一枚母に送ろう」と思いついた彼女は、家に帰ると作品をビニール袋に入れ、簡単な手紙を添えて宅配便で母の元に送ったのでした。
数日後、母から「涙が出るほど嬉しかった。あれは仏壇に飾ってあるよ」と喜びの電話があり、彼女自身も「ほんのちょっとしたことなのに、お母さんがこんなに喜んでくれた」と、とても幸せな気持ちになれたそうです。
親は命の元です。親の存在をいつも心に置いて、喜ばせる実践を重ねることがすべての幸福の源となるのです。
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